感謝の手紙

聴く人に音の持つ力を届ける。

藤原 喜代子さん、今井 恵さんから、坂部 友淳さんへ

2012年1月7日
神戸YMCA創立125周年記念音楽イベント

2012年1月5日
藤原さん宅でのホームコンサート

ピアノ調律師の今井さんと介護福祉士の藤原さんが、心奪われた美しい音楽がある。それが坂部さんのピアノだ。彼が弾くピアノは聴く人に力を与える。未熟児網膜症のため生まれながらにして視力はない。知的障害があるため会話をすることも難しい。だが、ひとたびピアノに向かうと指がはねるように動き出し、楽しそうに歌詞を口ずさみ始める。聴いたことのある音楽であれば、そのメロディーを頭の中で楽譜に置き換え、即興で弾いてしまう特別な才能が備わっている。坂部さんが17歳でピアノを習い始めたころ、今井さんがその才能に気づいた。家にこもりがちだった彼を外に連れ出し、演奏を披露する場を設けた。坂部さんの家にケアワーカーとして出向いた藤原さんは、演奏を初めて聞いた時、ボロボロと涙が止まらなかったという。「私の家にピアノがあるから、よかったら弾いてもらえるかしら」以来、藤原さんのお母さんが生前弾いていたピアノを使っての小ぢんまりとしたコンサートを毎月開いており、坂部さんは一千曲を超えるといわれる引き出しの中からリクエストに応え、聴衆を楽しませている。「私もピアノを習いたい」「詩の朗読とコラボしたい」と、坂部さんのピアノは美しい音色を伝えるだけでなく、多くの人の表現欲をかきたてる不思議な力を持っている。

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