スペシャル粋トーク

2012年 夏号

団塊の世代が集まる

かしの ラジオの仕事を始めたきっかけは?

増井 高校生の頃、「ポートジュビリー」というアマチュアフォークサークルで活動をしていました。「ロックキャンディーズ」の谷村新司さん、「フーリッシュ・ブラザーフッド」の堀内孝雄さんたちと一緒でした。そのコンサートの司会をしていたことが縁で、映画を紹介する番組のアシスタントとして声をかけていただいたのが始まりです。淀川長治さんにもゲストに来ていただいたことがあります。

かしの 淀川さんは私の高校(旧・第三神戸中学校〜現・長田高等学校)の先輩でもあるのですが、どんな方でしたか。

増井 いつお会いしても「お嬢ちゃん」と声をかけてくださって。「映画は人生の一番のお手本だよ」と教えていただきました。できた映画を批判することは簡単ですが、淀川さんはどんな映画でも作り手の思いを受け止め、いいところを見つけようとされていました。かしのさんは、プロデューサーとして映画を作る立場にもおられましたよね。

かしの 映画はたいてい監督主導で作られるわけですが、私たちは監督とプロデューサーがペアになって、ファイナルカットはなるべくプロデューサーが決めるようにしていました。第三者的な視点が必要だという判断です。やはり見てもらったお客さんの反応がすべてですから。

増井 アナウンサーの先輩から「伝えることと伝わることは違うのよ。こちらはそう伝えたつもりではなくても、受け取り手が違うように受け取ればそれがすべてだから」と言われたことを思い出します。そこまで思いをはせないといけないんですね。

映画評論家、ラジオパーソナリティ神戸女学院中学高等部を経て、大学は文学部社会学科卒。映画番組のアシスタントを務めたことがきっかけで放送の世界へ。以後、在阪各局でディスクジョッキー、パーソナリティとして活躍。一方、シネマキャスターとして、映画の評論も行っている。現在出演中の主な番組は「ばんばひろふみ!ラジオ・DE・しょー」(ラジオ関西・金曜9:00~11:45)、「ほぐすらじお」(毎日放送・月曜19:00~19:30)など。

イベント情報:
「微サイレント」~無声映画&弁士&パントマイム&ピアノ~

樫野孝人(かしのたかひと)/須磨区在住・昭和38年生まれ
樫野孝人(かしのたかひと)/東灘区在住・昭和38年生まれ

飛松中学、長田高校、神戸大学卒業。リクルートを経て、(株)IMJの代表取締役社長に就任し株式公開。2009年神戸市長選挙に立候補するも惜敗。現在、(株)OKwave取締役、Kiss FM取締役を務めながら神戸リメイクプロジェクト代表として神戸の活性化を推進中。また広島県庁の広報統括責任者、京都府参与として地方自治体の改革も手掛けている。新著は「地域再生7つの視点」(カナリア書房)

かしの 神戸と映画の関係についてはどう思われますか。

増井 小さい頃から神戸で映画を観るのが習慣でした。映画館に外国人が多かったのは神戸ならでは。洋画の場合、何でここ笑うのってところで大爆笑するのを見て、英語を勉強したい、外国人の友達を作りたいと思いました。神戸は狭いエリアに1番館から3番館、阪急会館、スカイシネマ、三劇、ビッグ、松竹などの映画館が集積していて、行き当たりばったりで映画に行ける楽しみもありました。買い物をするにも神戸はぶらぶら歩ける距離にすべてがそろっていてしかも回遊性があります。

かしの 神戸の文化や生活スタイルも映画が反映しているのかもしれませんね。

増井 そうそう。洋服屋さんに母と行って、映画雑誌に出ているこの服を作ってください、ってお願いしたものです。それが当たり前だと思っていたら、大阪にはない。阪神間特有のスタイルみたいですね。女子同士で出かけるのでも、大阪に行くと「彼氏おらへんのや」と思われるけれど、神戸なら違和感がない。街がおしゃれで温かいですね。

かしの 増井さんが一番好きな映画は何ですか。

増井 気持ちがへこんでいる時に観る3部作っていうのがあって、「月の輝く夜に」「天使にラブ・ソングを」「プリシラ」なんですが、中でも今は「プリシラ」が一番好きです。ドラァグクイーン(男性が女装して行うパフォーマンス)が砂漠の小さな街のホテルでショーをするために、大型バスで旅をするお話です。途中でアクシデントに遭ったり、迫害されたりするシーンがあるのですが、もう生きているだけで素晴らしい、よーし行けーって思わされるんです。映画からはいろいろなことを教わりますが、私が好きなのは、観ていて元気がもらえる作品ですね。何回観ても元気をチャージしてもらうことができます。

かしの これからやってみたいことは何ですか。

増井 団塊の世代の1人として、同世代の人たちが一緒に趣味を楽しんだり、悩みを共有したりできるキッチンのような場やラジオ番組を作っていきたいと思っています。それから、映画の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたいですね。今度新たにシネマ・カルチャー・カンパニー(仮称)という団体を立ち上げることになりました。7月28日(土)に、そのオープニングイベントとして、私たちが制作した無声映画を使って、パントマイムとピアニスト、弁士による映画会を神戸映画資料館(長田区)で開催します。ぜひいらしてください。

かしの 団塊世代をターゲットにした場ってありそうでないですね。楽しみです。今日はありがとうございました。

かしのたかひと今回のツボ

アメリカの政治経済の中心は東海岸のワシントンやニューヨークですが、それに負けないくらい西海岸のハリウッドも光を放っています。日本の政治経済の中心は東京ですが、文化の中心は関西が担うべきでしょう。お笑いは大阪に任せて(笑)、映画や音楽、アートなどのジャンルは神戸が日本をリードし、世界に発信していく都市を目指したいものです。ましてや映画発祥の地として、神戸は映画を観光施策の軸に据えても良いと思います。3年前の市長選マニフェストでは、市内の映画鑑賞を毎日1000円にして観光入込客数を20万人増やし、経済効果を約10億円出す策を考えていました。鑑賞市場が大きくなることで公開初日の舞台挨拶に監督・役者が毎週神戸に訪れるようになります。その前夜、三宮や元町を有名女優・男優が飲み歩けば街が華やかになってきます。そして、100年映画祭をスケールアップするか国際映画祭を誘致するかは別として、須磨海岸でカンヌ映画祭のような作品の買付マーケットと社交場を展開します。併せて映画制作者の新しい才能の発掘、育成も進めていけば、ロケ地誘致などで高い実績を持つ神戸フィルムコミッションを加え、競合優位性は十分揃っているでしょう。映画の都・神戸、実現したい姿のひとつです。

取材協力

ホテルトアロード

トアロードに面する便利な立地。英国の古き良き時代の伝統をかもしだす落ち着きと温かさをもつアットホームなホテル。"カフェレストラン リトル アン"のランチバイキングも人気です。

TEL:078-391-6691
中央区中山手通3-1-19

『スペシャル粋トーク』の一覧へ